ヒッコリーは、もともと枕カバーの生地だった

名前は「ヒッコリーの木のように丈夫」から。作業着になる前は、枕やマットレスに使う生地でした。ワバッシュ・リバティとの違いも書きます。

先に3行でまとめます。

名前     ヒッコリーというアメリカの木から。斧の柄に使うくらい硬い
         「その木みたいに丈夫」という意味。柄の名前ではなく丈夫さの名前

もとは   枕カバー・マットレス・カーテンの生地(ティッキング)だった
         丈夫で目が詰まっていて、羽根が抜けてこない

それが   19世紀に作業着へ
         1900年代前半、アメリカの鉄道員の服として広まる

名前は木から来ている

ヒッコリーは、アメリカに生えるクルミ科の木です。 非常に硬く、斧の柄や工具の持ち手に使われます。

「ヒッコリーの木のように丈夫」 という意味で、この縞の生地がそう呼ばれるようになりました。 柄の名前ではなく、丈夫さの名前です。

日本語でも「ヒッコリー」としか言いません。 木の和名がそのまま「ヒッコリー」で、 生地のほうも「ヒッコリーストライプ」「ヒッコリー縞」と呼ばれます。訳語がありません。

理由は、日本にこの木が生えていないからです。 クルミ科ペカン属で、北米の木です。 大昔(第三紀)には日本にもあったとされますが、絶滅しています。 同じ属で日本人が知っているのは、食べもののペカン(ピーカンナッツ)のほうです。

生えていない木の名前が、日本の服屋で普通に通じているというのが、この言葉の面白いところです。

作業着より前は、寝具だった

もとは ticking(ティッキング)という生地です。 枕カバー・マットレス・カーテンに使われていました。

ティッキング   丈夫で、目が詰まっていて、羽根が抜けてこない
                 ↓
19世紀        その丈夫さが作業着に向いていると分かる
                 ↓
1900年代前半  アメリカの鉄道員の服として広まる

寝具に求められる性質と、作業着に求められる性質が同じだったというのが、この生地の始まりです。

鉄道の柄

ヒッコリーが定着したのは鉄道です。機関士の服として、事実上の制服のようになりました。

ラウンドハウスというブランドは、名前がそのまま鉄道から来ています。 1903年創業で、 ロック・アイランド鉄道とサンタフェ鉄道の作業員のために作り始めました。「ラウンドハウス」は 機関車を修理する扇形の車庫のことです。

同じ時期のブランドがいくつも残っています。

ブランド いつから
ラウンドハウス 1903年
ポインターブランド(L.C.キング) 1913年
スタンレー(Stan Ray) 1970年代・テキサス州クロケット

Lee もヒッコリーを広めた側です。

ワバッシュ・リバティとの違い

縞の作業着は3種類あって、混同されています。 一番大きな違いは、縞の作り方です。

どう作るか
ヒッコリー 織る。 先に染めた糸で縞を作る
ワバッシュ 抜く。 インディゴに染めた生地から、薬品で色を抜いて柄を出す
リバティ 織る。縞がヒッコリーより細く、間隔も狭い

ワバッシュをよく見ると、線が点の集まりになっています。 色を抜く工程(抜染)で 点状に抜くためです。

この違いは、着たあとに出ます。

ヒッコリー   糸そのものが染まっている  →  何年経っても縞がはっきりしている
ワバッシュ   表面の色を抜いてある      →  点がぼやけ、縞がにじんでいく

「変わらないのがヒッコリー、変わっていくのがワバッシュ」 という覚え方でだいたい合っています。

参照: ペカン属(Wikipedia) / ヒッコリー(コトバンク) / Wabash, Hickory, and Liberty Oh My(Heddels) / Roots of Hickory(Stan Ray) / The History of Hickory Stripe(Freestone & Field) / Wabash Denim vs Hickory Stripe(Japanese Denim Jeans) / Round House